調査日 2026-10-24 / 一次資料(環境省・国交省・自治体)中心 / 弘樹さん向け
水道水から PFAS(PFOS・PFOA)が見つかった日本の地域
PFAS=有機フッ素化合物の総称。PFOS・PFOAはその代表で、分解されにくく「永遠の化学物質」と呼ばれる。
ng/L(ナノグラム毎リットル)=1リットルあたり10億分の1グラム。50ng/Lは、水50万リットル(200Lの湯船で約2,500杯分)に約0.025グラムが溶けている濃さ。
50 ng/L
水質基準(PFOS+PFOAの合算)。2026年4月1日から法的義務
19 事業
2020〜2025年8月に50超が記録された水道事業(専用水道は別に59)
1,400 ng/L
最大値=岡山県吉備中央町(2022年度)
最大 9 ng/L
さいたま市水道(浄・配水場、2021年度)。井戸は12(停止済)
結論3行
- 50ng/Lは2020年から「暫定目標値(守る義務なし)」、2026年4月1日から「水質基準(検査と遵守の義務あり)」。値は変わっていない。
- 50超は全国で19事業。最新の検査では18事業が50以下、1事業が応急対応中(国の公表、事業名は非公表)。高い値の多くは井戸の水。
- さいたま市は検査開始以来すべて基準内で、最大でも一桁〜12ng/L。武蔵浦和も同じ市の水道。
図1 50ng/Lを超えた水道がある都道府県
マスにマウスを乗せると、事業名と最大値が出ます。色=水道事業(簡易水道を含む)の最大値。右上の点=専用水道(社宅・基地などの自家用水道)の超過数。
500以上100〜49951〜99水道事業の超過なし埼玉県(弘樹さん)● 専用水道の超過あり
図2 地域別の最大値(ng/L)
各年度の最大値のうち一番高い年。目盛りは対数(1目盛りで10倍)。原水(浄水前の水)の値が入っているものがあります=飲んだ水の濃度とは限らない。
水道事業国設の専用水道(自衛隊・刑務所等)参考:埼玉・さいたま市━ 日本の基準 50┅ 米国 4(PFOS・PFOAそれぞれ)
米国の4ng/Lは「PFOS・PFOAそれぞれ」の値。日本の50は「合計」。単純に並べると米国が約12倍厳しいが、根拠にした健康影響の選び方が日米で大きく違う(下の「健康影響」参照)。
制度の年表
- 2016年 沖縄県企業局が北谷浄水場の水源の高濃度を公表。嘉手納基地が発生源の可能性が高いと報道(推定)
- 2020年4月1日 水道の「水質管理目標設定項目」に。暫定目標値50ng/L(合算)。検査も遵守も義務ではない
根拠:体重50kgの人が一生、毎日2L飲んでも健康に悪影響が出ないと考えられる水準
- 2023年11月 IARC(WHOの国際がん研究機関)がPFOAをグループ1、PFOSをグループ2Bに分類
- 2024年4月 米国EPAが飲料水の上限をPFOA・PFOSそれぞれ4ng/Lに
- 2024年6月25日 食品安全委員会が評価書。耐容一日摂取量(TDI)=PFOS・PFOAとも20ng/kg体重/日
- 2024年11月29日 環境省・国交省が初の全国調査を公表。50超は延べ14事業、最新は全て50以下
- 2025年5月 EPAがPFOA・PFOSの4ng/Lは維持、期限を2031年に延ばす方針。他4物質は撤回へ(2026年5月に提案規則)
- 2025年6月30日 省令公布(令和7年環境省令第19号)。水質基準に格上げ、値は50のまま。PFHxSなど8物質を「要検討項目」に
- 2025年12月25日 フォローアップ調査。水道事業19・専用水道59で超過歴
- 2026年4月1日 施行。水道事業・用水供給・専用水道に、検査(原則おおむね3か月に1回以上)と基準遵守の義務
地域の一覧(50ng/L超が記録された水道)
年度は「年度の始まりの年」(2022年度=2022年4月〜2023年3月)。原因は自治体・報道が指摘しているもので、確定ではないものは「推定」と書いています。
出典:環境省・国交省「調査結果一覧(更新)」2025-12-25、国交省「対応事例集」2024-11-29、各報道(下の出典一覧)。原因の空欄は「公表資料に記載なし=未確認」。
さいたま市・埼玉県
さいたま市水道局
- 「検査を開始して以来、すべての検査地点で水質基準値を下回っています」(2026-05-29更新)
- 浄・配水場:最大9ng/L(南下新井配水場 2021年4月)。2025年度は最大6
- 水源の井戸:最大12ng/L(南浦和浄水場4号井 2021年5月)=同浄水場は2021年11月に停止
- 国の一覧の年度最大値:2021年 9 → 2022年 6 → 2023年 3 → 2024年 6 → 2025年 4
- 2024年8月、市の河川調査で藤右衛門川が当時の指針値を超過 → 東浦和・北浦和浄水場と井戸を臨時検査 → すべて不検出
- 検査:浄・配水場の出口と蛇口=年4回、井戸=年1回
埼玉県企業局(市に一部を供給)/武蔵浦和
- 県営水道は2020年度の測定開始以来、全地点で基準値以下(国の一覧の最大は2020年度の7)
- 2026年度の給水地点:さいたま市東部配水場 4ng/L(6月・9月)
- 武蔵浦和(南区)も同じさいたま市水道。配水場の系統は未確認だが、全配水場が上の範囲内なので結論は同じ
- 県内で50に近かったのは富士見市49(2023年度)・深谷市43(2025年度)
- 2026年度の市独自の値は未確認
健康影響
分かっていること
- 食品安全委員会(2024年):TDI=PFOS・PFOAとも20ng/kg体重/日。体重60kgなら1日1,200ng。根拠は動物実験(PFOS=ラットの子の体重増加の抑制、PFOA=マウス胎児の骨の形成)
- 疫学では、肝臓の数値(ALT)・コレステロールの上昇、出生時体重の低下、ワクチンの抗体の低下との関連は「否定できない」が、基準の根拠にするには証拠不十分
- IARC(2023年):PFOA=グループ1(ヒトに発がん性がある)。根拠は動物実験と、ばく露されたヒトでの仕組みの証拠。ヒトの疫学(腎臓・精巣がん)は「限定的」。PFOS=グループ2B(可能性がある)
- 米国EPA:PFOA・PFOS それぞれ4ng/L(遵守は2031年までに延期の方向)
- 環境省:国内で、PFOS・PFOAの摂取が主な原因とみられる個人の健康被害の事例は確認されていない
分かっていないこと
- どの血中濃度で、個人にどんな影響が出るか。環境省は「血液検査の結果だけで個人の健康影響は把握できない」としている
- 日米の差の理由:何を「有害な影響」とみなすかが国際的にそろっておらず、指標値はPFOSで約600倍、PFOAで約5,300倍違う(農水省資料)
- IARCの分類は「発がん性の証拠の確かさ」で、どれくらいの量で危ないかは示していない
グループ1=証拠が十分という意味で、危険の大きさの順位ではない(加工肉や飲酒も同じグループ1)。
個人でできる対策
出典:Herkert ほか, Environmental Science & Technology Letters 2020(米ノースカロライナ州の家庭89台を測定)。活性炭式は長鎖PFAS(PFOS・PFOAなど)で約60〜70%、短鎖で約40%、製品ごとのばらつきが大きい。
浄水器
- 逆浸透(RO)と2段式(シンク下):調べたPFASをほぼ全部除去
- ピッチャー・蛇口直結・冷蔵庫の活性炭:除去率がばらつく。水が速く通るほど効きにくい
- カートリッジが飽和すると、ろ過後の方が濃くなった家もあった=交換時期を守る
- RO は排水が出る・設置費がかかる
煮沸は効かない
- PFASは熱で壊れず、蒸発もしにくい。水だけが減るので濃度は少し上がりうる(米ニューメキシコ州保健局・マサチューセッツ州ハノーバー町の住民向け資料)
- 日本の環境省Q&A集には煮沸の記述は見当たらない=国内の公的資料では未確認
- さいたま市の水は最大でも一桁〜12ng/L。浄水器は必須ではない。気になるならRO・2段式が根拠の強い選択
確かめられなかった点
- フォローアップ調査で「応急対応中」とされた1事業がどこか(資料に事業名なし)
- 官報の原文(公布日・番号は大阪市と環境省の公表で確認)
- 東京都が多摩の井戸を止めた正確な時期と本数(「2019年度に一部停止」は報道ベース)
- さいたま市の2026年度の市独自データと、武蔵浦和の配水系統
- 大阪府摂津市の水道水の最新値(高濃度は地下水・水路。水道原水は目標値以下と府・市)
- 米国EPAの最終規則(2026年10月時点)
出典一覧
- 環境省 2024-11-29「水道におけるPFOS及びPFOAに関する調査の結果」 https://www.env.go.jp/press/press_04025.html (PDF https://www.env.go.jp/content/000268475.pdf / Excel https://www.env.go.jp/content/000268549.xlsx)
- 環境省・国交省 2025-12-25「フォローアップ調査の結果」 https://www.env.go.jp/press/press_02143.html (PDF https://www.env.go.jp/content/000365928.pdf / Excel https://www.env.go.jp/content/000365699.xlsx)
- 国交省 2024-11-29「水道事業者等によるこれまでのPFOS及びPFOA対応事例について」 https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/watersupply/content/001845696.pdf
- 環境省「PFOS、PFOAに関するQ&A集」2024年8月 https://www.env.go.jp/content/000242834.pdf
- 環境省 PFAS FAQ https://www.env.go.jp/water/pfas/faq010.html
- 大阪市(省令の公布日・番号) https://www.city.osaka.lg.jp/templates/kisoku_kohyo/kenko/0000670816.html
- 神奈川県衛生研究所 衛研ニュースNo.232 https://www.pref.kanagawa.jp/sys/eiken/005_databox/0504_jouhou/0601_eiken_news/files/eiken_news232.htm
- さいたま市水道局 https://www.city.saitama.lg.jp/001/006/002/051/002/p115468.html / https://www.city.saitama.jp/001/006/002/051/002/p115468_d/fil/R03-07_PFAS.pdf
- 埼玉県企業局 https://www.pref.saitama.lg.jp/c1305/90j00-pfas.html / https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/255055/r8_9_kyusuisaki.pdf
- 東京都水道局 令和2年度 多摩の検査結果 https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/waterworks/-pfospfoa_r2
- KSB瀬戸内海放送(吉備中央町)2025-02-19 https://news.ksb.co.jp/article/15632048
- 琉球新報(北谷浄水場) https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1636402.html /(国分寺の血液検査) https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1655262.html
- 大阪府(摂津市の地下水) https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/31264/r707_result.pdf
- 農林水産省(TDIの根拠・海外との差) https://www.maff.go.jp/j/study/risk_kanri/r7_1/attach/pdf/index-4.pdf
- IARC Q&A(Monographs Vol.135) https://www.iarc.who.int/wp-content/uploads/2023/11/QA_Mono135.pdf
- EPA規則の動向 https://pfas.foxrothschild.com/2026/05/epa-is-one-step-closer-to-scaling-back-pfas-mcls/ / https://www.mass.gov/info-details/epa-maximum-contaminant-levels-mcls-for-pfas
- Herkert et al. 2020 https://ferguson.cee.duke.edu/publications/assessing-effectiveness-point-use-residential-drinking-water-filters-perfluoroalkyl / https://sites.nicholas.duke.edu/pfas/files/2020/03/PFAS-Factsheet-on-Filters.pdf
- 煮沸:https://nmtrackverify.doh.nm.gov/contentfile/pdf/environment/water/pfas/NMDOHPFASFactsheetNov2023.pdf / https://www.hanover-ma.gov/sites/g/files/vyhlif12081/f/news/hanover_pfas6_pn_q3_2023.pdf